“ヒヨドリ”ではないイソヒヨドリ


日本列島を桜前線が駆け足で北上する季節。これまで寒かった海辺の風も暖かくなるこのころに皆さんにぜひ出会ってほしい鳥がいます。イソヒヨドリです。



ヒヨドリと名前についていますが、実際はツグミの仲間です。全長23cm(ヒヨドリは27cm)くらいで、ヒヨドリよりは一回り小さいです。雄は頭から背、腰にかけて鮮やかな青で腹は赤い色をしており、全身が灰色のヒヨドリとは似ても似つかない出立ちですが、雌は全身地味な褐色に斑点があり、



どことなくヒヨドリを連想させます。ゆっくり羽ばたきながらフワフワと飛ぶことが多く、飛び方の雰囲気はツグミとムクドリの中間のような感じです。

海岸や港へ行ってみよう


その名前の通り、磯などの海岸を好む鳥ですが、磯は足元が危ない場合もあります。トビウミネコを観察した漁港へ行ってみてください。周辺が砂浜の多い漁港だと姿が見られないこともありますが、写真のような切り立った崖が近くにある漁港であれば、だいたい見つけることができます。



意外と目立たない?


イソヒヨドリは、見通しのよい場所に生息していること、羽の色も雄はとても美しいことから、読者のほとんどの方はすぐに見つけることができると思います。しかし、頭のどこかで「見つけにくい鳥」という感覚ももっていてほしい種類です。じっとしていると意外とわかりにくいのです。特に岩陰や建造物にいるときは周辺の風景に溶け込んでしまいます。

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また、日陰でも同様です。

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図鑑で見ると美しい青や赤の色ですが、実際はちょっとした保護色なのかもしれません。

さえずる姿を見つけよう


見つけにくいなんて紹介をすると、探すのは難しいと思われてしまったかもしれません。しかし、春はイソヒヨドリにとって繁殖の始まりですので、よく目立つ場所でさえずりをしています。その姿をまずは見つけるようにしましょう。
港の街灯や電柱の上などでさえずる姿を探してください。



しばらく観察していると、美しい声でさえずる姿が見られると思いますが、その際に翼をゆっくりと羽ばたかせる行動が見られるかもしれません。おそらく雌へのアピールなのだと思います。



声を響かせるために高いところでさえずることが多く、観察時には逆光になってしまうことがほとんどです。そのため、雄のきれいな羽とさえずりを同時にはなかなか楽しめないのですが、早朝(特に日の出少し前)ならば、チャンスがあります。
例えば、漁港が近い民宿に泊まった翌日にちょっと早起きして港近くを散歩すれば、こんな風景に出会うことができるでしょう。




海の幸を守る!?


さえずりの観察ができたら、今度は何を食べているかを双眼鏡で追ってみましょう。岩場の陰などへ飛び去った後に、カニなどをくわえて食べている光景に会えるでしょう。



カニの他には、小さな昆虫やフナムシなど、海岸にすむ小動物をよく捕えて食べています。伊豆半島の漁港でイカを干していて、そこに虫がたくさん寄ってきていたのですが、その虫を片っ端から捕まえて食べているのを見たことがあります。

漁師さんにお聞きすると「そうそう、あいつはありがたい鳥なんだ」と笑っていました。漁師さんにとっても、大事な鳥のようです。

綺麗な羽になるには時間がかかる


イソヒヨドリの観察をしていると、雄にしては青い羽や赤い羽の部分に雌のような地味な羽が混じっている個体に会うことがあります。



これは、まだ若い雄だと言われています。雄が全身綺麗な羽に揃うまで数年かかるようです。このような個体を見たら、「がんばれよ」と一声掛けてあげてください。

磯から離れて生きる


これまでイソヒヨドリを紹介してきて「うちの近所には海がないのでイソヒヨドリは見られないのか」と残念に思っている方、ご安心ください。イソヒヨドリは1980年代ころから内陸部への進出が見られており、長野県や岐阜県など海のない県でも記録があり、大きなダムサイトなどでの観察例が増えています。

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また近年は、海から離れたビル街や大型ショッピングモールなどでも確認され始めています。イソヒヨドリから見れば、お洒落な建物も海辺の岩場と同じように見えているのは、なんだか不思議な気持ちになります。

私の実際の観察で一番驚いたのは、伊勢神宮の表参道にイソヒヨドリが住み着いていたことです。



海が近くにあるとはいえ、低い家並みしかない場所で、人の往来の多い場所で観光客の食べ残しや食べこぼしを店舗の軒先から探していました。

イソヒヨドリの内陸部進出を私が初めて知ったときは「海岸の環境が悪くなって新天地を求めてさまよっているのではないか」と危惧しました。
しかし、調べてみるとイソヒヨドリの英名は「Blue Rock Thrush(青い岩場のツグミ)」といい、ヨーロッパなどでは岩場があれば内陸部でも本来は生息しているようです。以前、私が野鳥観察に出かけたネパールやモンゴルは海のない国ですが、採石場や巨大な岩のある場所にはイソヒヨドリがいました。

日本のイソヒヨドリにしてみれば、「“内陸部進出!”なんて、ホントはそんなニュースではないだけどな〜」と言いながら笑っているのかもしれません。

撮影地:
鹿児島県(奄美市)、神奈川県(愛川町、海老名市)静岡県(伊東市)、千葉県(鴨川市)、三重県(伊勢市)、新潟県(佐渡市)

お勧め機種
イソヒヨドリの青や赤の観察は光の向きによって黒く見えてしまうことが多いので、最新機種のエンデバーEDⅡシリーズなど、明るいレンズの装備をもつことをお勧めします。さえずりは街灯や電柱の上などですから、望遠鏡があればじっくり観察できます。

<双眼鏡>
エンデバーED II 8320 : 売価33,000円(税別)
エンデバーED II 8420 : 売価39,000円(税別)
エンデバーED II 1042 : 売価42,000円(税別)

<望遠鏡>
エンデバーXF 60S : 売価37,905円(税別)
エンデバーHD 65S : 売価75,048円(税別)


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