緑色のホオジロ、アオジ



秋から冬にかけて、里山は小鳥たちがたくさん越冬に来ているのですが、そのなかでも今回は茂みの中が大好きな鳥、アオジを紹介します。
大きさはスズメほどのホオジロの仲間で、頭部が濃い緑色です。



アオジの“アオ”は以前紹介したアオゲラ同様です。雄は嘴の根元から眼の周囲までが黒っぽく、雌はやや色が淡く、眼の周囲が黒くありません。





ホオジロの胸から腹は褐色味がありますが、アオジはお腹の黄色があざやかです。




アオジを見るなら、これからの季節!




アオジは北海道から沖縄まで記録のある鳥です。
春から夏は北海道の平地や本州の高地などで子育てをしており、秋になると観察しやすい身近な環境にやってきます。

しかし、初秋のうちは警戒心が強くて茂みの中に潜んで出てこなかったり、人の姿を見るとあっというまに飛び去ってしまいます。
1月に入ると少しずつ環境に慣れてくるようで、薮から姿を見せるようになり、2月から3月は観察がしやすくなります。





ツグミシメなども同じような行動をしますので、きっと森林などで越冬する鳥たちの基本的な習性なのかもしれません。


冬枯れの里山へ


アオジに出会うためにチェックする里山の環境は、薮などが近くになる谷戸(周囲を雑木林などに囲まれた平地のある場所)のある環境。
多くのアオジが餌を探してやってきます。
秋に比べ警戒心が少しずつ薄くなっているとはいえ、無防備になるわけではないので、いざというときに逃げ込める場所があるほうが彼らにとっては居心地がいいようで、周囲を林に囲まれていて、枯れた草が茂っている場所ではしばらく静かにしてみましょう。



冬の間は木の高い場所に止まることは少ないため、目線は低い場所を中心に目を動かすと発見が早くなります。






か細い声と草が揺れる音、そして雪解け




茂みの中で、かくれんぼをしているようなアオジの姿を何の手がかりもなく探すのは難しいので、出会いのコツをお伝えします。
まずは、か細い「チッ」という小さな声が聞くこと。散策路で静かにたたずんで、耳をすましましょう。
何度か声がしたら、キビタキの回で紹介したように声のしたところを中心に視野を広げるようにして、アオジが動いて草が揺れるときに出るカサカサ音や、枝や草の揺れ動く様子を待ちます。




動きがあったら、そこに双眼鏡で探し、すぐに見つからなければ、肉眼での探索にすぐに戻りましょう。
また、茂みの中に逃げ込んだり、潜んでしまうアオジはいつまでも追うことはせずに、全身がほぼ見えるような場所に出てきているアオジをしっかり観察するようにするのが良いでしょう。
アオジに会う上で大事なことは、アオジが見えにくい場所に止まっても移動しないことです。
動いてしまうと、警戒して薮の中へすぐに逃げていってしまうのです。
見やすい場所に出る機会をじっと堪えて待ちましょう。







もしそれでも見つけられないという方は、雪が降るのを待つことをお勧めします。雪が少し溶けて少し地面が見え始めたころが狙い目です。






背中の保護色は見事




アオジの黄色いお腹は、遠くからでもわかるくらいの鮮やかさがあります。




それにひきかえ、背中側は何とも地味な模様です。



アマチュア野鳥カメラマンも、アオジを撮影していると「こっち向け!こっち向け!」と呟いている姿をよく目にします。

しかしこの背中側の地味な色彩は彼らにとっては何よりも大事なもの。
以前、アオジを観察しているときにハイタカという猛禽が空を飛んだとき、急に地面に伏せてじっとしたのですが、そのときに私は一瞬アオジの姿が消えたようにみえました。
見つからないように一切の身動きを止めたことで周囲の色と溶け込んでしまい、私は望遠鏡に捉えたままのアオジの居場所がわからなくなったのです。



保護色の素晴らしさを実感しました。このときから、アオジの後ろ姿にも私は敬いの気持ちを持つようになったのですが、不思議なことにこの出来事以降、地面にいるアオジを見つけるのがうまくなったように感じています。



茶色いアオジがいる?




アオジを里山で観察していると、大きさや色合いがアオジによく似た模様の茶色っぽい小鳥に会うことがあります。
これはカシラダカという、別のホオジロの仲間で、アオジと同じように冬に里山などへシベリアから渡ってくる鳥です。
脇の斑が茶色でお腹が白いことがアオジと大きな違いです。



「チッ」という声もアオジとよく似ているので、初心者が声の聞き分けで非常に迷う種類の一つですが、“アオジではない鳥もいる”という意識を持ちながら野外を歩くことで、識別力の上がり方は格段に速くなります。
もし余裕があれば、カシラダカの発見もチャレンジしてみてください。



春の気配とともに




3月になって暖かい日が続くようになると、アオジの行動に変化が現れます。
陽射しが気持ちのよい朝などは木の枝先に止まる姿をよく見かけるようになります。



これは雄によく見られる行動で、この変化の真相は、繁殖に向けてさえずりの準備をしているようです。
冬の間は薮でコソコソとしていたアオジですが、雄は繁殖地では枝先に目立つように止まって、美しい大きな声でさえずります。



この姿を実際に見ると、季節による行動の大きな差に頸を傾げたくなりますが、その2つの顔を持つことを含めて、アオジという鳥の生き方なのです。
この冬、アオジに出会えたら、ぜひ夏の高原や北海道にも足を運んで、彼らの“もう一つの顔”を観察してみてはいかがでしょう。


撮影地:
神奈川県(座間市)、群馬県(館林市)、埼玉県(入間市)、千葉県(市原市)、長野県(長野市)



お勧め機種
アオジは暗い場所や薮の中など見つけにくい場合もありますので、双眼鏡は明るいレンズを搭載したEDⅡシリーズでの観察が最適でしょう。
望遠鏡で捉えるには直視型のほうが便利でしょう。
同じ場所でさえずる姿も見られる繁殖地での観察は、傾斜型のほうが体勢に無理がなく、疲れを感じにくいのでお勧めです。

<双眼鏡>
エンデバーED II シリーズ


<スコープ>
エンデバーHDシリーズ
エンデバーXFシリーズ



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