色は地味な鳥ですが…

木々の若い緑がまぶしかった季節を越えて、ご自宅の周りの自然も深い色合いで落ち着いてきたことと思います。木の葉が茂り始めてきたことで、鳥たちの姿も見にくくなってきてしまい、せっかく買った双眼鏡ももうしばらくは出番がないかも…と残念に感じておられる方に、ぜひ会いに行っていただきたい鳥がいます。オオヨシキリです。



オオヨシキリは、夏に日本へ渡ってくる鳥で全長は18cm。前回紹介したホオジロが全長16cmですので、ホオジロよりもちょっと大きいくらいと思っていただければよいでしょう。色は全身がほぼ褐色です。カワセミのように輝くブルーなど派手な色がないので、見つけにくいだろうと予想されるかもしれませんが、そんなことはありません。そして、この鳥との出会いは、この地味な姿とは異なる、あなたの想像を越える驚きが待っています。


ヨシの草原へいこう!

オオヨシキリに会うには、その名が示すヨシ(※注1)という草の生える草原へ出かけてください。


ヨシは、ジメジメと湿っている土を好む植物で、川沿いや池、沼の周囲に生えています。前回ご紹介したホオジロに会った草原や田畑の先に写真のような川があれば、そこにヨシも生えていますので、探してみてください。


そこから、こんな声が聞こえてくるはずです。


オオヨシキリは、地味な色の鳥ですが、お聞きのようにとても特徴的な大きな声で鳴くので、いればすぐにその存在を確認できます。もし声がしない場合は、川沿いを歩いてアシが少しまとまってある場所を探してください。広い調整池にヨシがあれば、そのような場所にもやって来ます。



とにかくヨシがあることが大事なようで、よく似ているススキやオギといった種類が生えている場所や草の丈が低い場所は好みません。




人間には同じように見える草原でも、オオヨシキリはしっかり植物を見分けていることがわかります。ですから、オオヨシキリの好む環境を見つけたら、まずは声がしないか、耳を澄ましてみましょう。


隠れても、またすぐ出てくるオオヨシキリ

地味な鳥で警戒心の強いオオヨシキリは、実は人の姿を見ると鳴くのを止めて草陰に隠れてしまいます。そんなことを言うと「やはり、見つけるのは難しいのでは?」と思われてしまいそうですが、心配はいりません。しばらくじっと待つと、草陰からそろそろと茎を伝ってヨシの先に出てくれます。






しかも、それは鳴きながらのことが多いので、声を頼りにその方向をじっと観察していれば、いずれヨシの先でさえずる姿を見つけることができます。




びっくりするような赤!

ヨシの先まで出てきたオオヨシキリを驚かさないように、そっと双眼鏡を向けてみましょう。すると、目の覚めるようなこんな“赤”が目に飛び込んでくるでしょう。



地味な体の色とは対照的な、派手な赤。私はこの赤を子供の頃に初めて見たときは、口の中を怪我しているのではないかと思ったほどです。 同じ場所に止まっているオオヨシキリの写真を撮りましたが、口を閉じているときと開けているときでは、まったく印象が異なります。




また、ヨシの緑色が背景だと色が非常に映えます。


なぜこのように派手な赤い色になったのかは諸説あるのですが、おそらく嘴の中の赤が健康のバロメーターで、それを鳴くときに見せつけることで雌への求愛と、ほかの雄が侵入してくるのを防ぐ2つの効果を兼ねていると思われます。また、同じヨシの原っぱにはコヨシキリというよく似た鳥がいることがあり、そのコヨシキリの口の中は黄色いので、それとの区別をはっきりさせるために発達したとも考えられます。


減少を続けるオオヨシキリ

日本は高度経済成長期、たくさんの工場を作るため「平らな広い土地」が必要で、目をつけられたのがヨシの広がる草原でした。田んぼでもないため、当時は価値のない非生産的な土地として開発対象にされ、多くのヨシの草原が失われました。それとともに、多くのオオヨシキリは住処を追われました。


私が子供のころは、最寄りの駅前にもオオヨシキリがやってくるヨシの原っぱがありましたが、今は駅ビルになって姿は消えてしまいました。また、近年の頻発する豪雨で急に水かさが増すようになった川ではヨシが根こそぎ流されてしまうことも増えました。
昔、広いヨシの原っぱを追われたオオヨシキリが、今、かろうじて残る川沿いのヨシの原っぱにたどり着いても、実はそこは安心できる場所ではないという現実。2-3回カマを振ればなくなってしまいそうな小さなヨシの草原で元気いっぱいに鳴いて一生懸命に生きる姿には、応援したい気持ちと、申し訳ない気持ちが入り交じります。
もし今年オオヨシキリのいるヨシ原を見つけたら、毎年行ってみてください。けなげに生きる彼らの姿を見ることをぜひ続けていただきたいです。




声はやかましいし、地味な鳥で、オオヨシキリが大好き!という人にはほとんど会うことはありませんが、彼らも地球の仲間です。共存するために、人間ができることは、していきたいものです。




(※1)ヨシは、アシとも呼ばれることがありますが、「悪し」を連想させることから、敬遠されることもあります。



撮影地:
神奈川県(平塚市)、埼玉県(坂戸市)、千葉県(香取市)、新潟県(佐渡市)


見通しの良いヨシの草原では、鳥を驚かさないためにも、10倍の双眼鏡で楽しむことをお勧めします。また、平地で体への負担も少ないので、望遠鏡で観察すると、より鳥たちの表情を捉えることができると思います。

適した光学機器

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