水辺に鳥を探しに行こう


7月も後半になれば梅雨が明け、いよいよバードウォッチング再開!といきたいところですが、身近な雑木林や緑の多い公園にいる鳥たちのなかには繁殖期も一段落していて、日の出直後などの早朝の涼しい時間に集中して餌探しをするものも多くて観察しにくい状態のほうが多くなってしまっています。
そこで、陽射しや熱中症の対策をしっかりして水辺へでかけて野鳥との出会いを楽しみましょう。

巨鳥、アオサギ


今回ご紹介するのはアオサギです。



以前紹介したコサギと同じサギ科に属しますが、60cmほどのコサギよりもずっと大きく、全長は95cmもある巨大な鳥です。



翼を広げたとき、右の翼の先端から左の翼の先端までは1.6mにもなります。トビとほぼ同じくらいの大きさになるのですが、翼の幅が広くはばたきもゆっくりであるため、トビよりも大きく感じることもしばしばです。


この巨大さゆえ、時々ツルに間違われることがありますが、日本に生息するツルの仲間は木に止まることはないので、遠くに見える場合でも木に止まっているツルのような鳥は、まず「アオサギかもしれない」と思いながら確認するとよいでしょう。


魚などがいる広い水面のある場所を好む鳥で、大きな川や湖沼、広い水田、干潟、港湾、ダム湖などによくいる鳥です。
川岸にいると見つけにくい鳥ですが、ダムや貯水池などで水面に浮いたブイなどにいる姿ならば簡単に見つけられますので、まずは双眼鏡で丁寧に確認しましょう。





また、これまでカワウカルガモに会ったことのある場所へ探しに行けば、きっといると思います。



コサギのように白くないために河原などでは保護色になってしまってちょっと見つけにくいかもしれませんが、これまで培ってきた鳥を探す力があれば、難しくないと思います。
試しに次の画像でどこにいるか、探して見てください。

クリックすると正解が表示されます


どこが「青」なの?


読者の皆さんの中にはイラストや写真を見て「アオサギって、どこが“アオ”なの?」と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。どう見ても灰色です。
事実、アオサギの英名はGrey Heron(灰色のサギ)なのです。にもかかわらず、日本の名前に「アオ」が使われている理由には、日本人の色に対する繊細さが関係しています。 

実はアオサギを漢字で表すと『蒼鷺』となります。
この『蒼』の意味の中には、灰白色または青みがかった灰色が含まれるため、この名前がついたようです。また、目の上にある冠羽や翼の一部、首の斑点の色も、よく見ると黒ではなく紺色がかっています。
この部分に注目してこの鳥をアオサギと名付けたのであれば、日本人が色に対して繊細な感性を持っていたということでしょう。



おまけの話になりますが、鳥の色彩を表現するときに現在の青、つまり英語のブルー(Blue)を示す色は、日本では瑠璃(るり)を用いることが多く、“青々とした葉”というように、緑も『アオ』と表現することもあります。
この説明を英語ではなかなかできないので、英語圏の方が日本に来てアオサギの和名の意味を聞くと、本当に不思議そうな顔をしています。

成鳥と幼鳥を見分けよう


アオサギは幼鳥と成鳥がどの季節でもよく見られます。
おそらく幼鳥がちゃんとした成鳥の羽毛に生え変わるまでに時間がかかるのでしょう。コサギではわかりにくい年齢がアオサギではよくわかります。 
成鳥は頭の冠羽が長く後頭部から伸びています。
また、首の付け根の羽毛が筋状になって見え、嘴が黄色やオレンジ色に見えます。特に繁殖期にはそれが顕著になります。



幼鳥は全体的に色が鈍く、目の上から伸びる冠羽が短く、上の嘴に黒っぽさがあります。距離が近ければ、背中の羽の縁が丸く見えます。最初のうちは難しいかもしれませんが、図鑑などで見比べながら、少しずつ覚えていきましょう。





動くものなら、何でも食べちゃう?


アオサギは主に魚を食べています。長い首をS字型に縮めてゆっくり獲物に近づき、一気に首を伸ばして嘴に突き刺して捕えます。

コサギのように「追い出し作戦」をすることはなく、じっと水の中に立ち続けて近づいてくるものを狙ったり、ゆっくり歩いて動きの鈍い獲物に照準を合わせているようです。時には呑み込めないくらいの大きな魚を捕らえてしまうこともあります。


ひとまず動いているものを見るとくわえてしまうようで、魚以外のものを捕まえているアオサギによく出会います。私は草地で虫を狙っているものや、モグラを捕まえたアオサギを見たことがあります。



一度大あくびをしているアオサギの写真を撮影したことがありますが、これだけ大きく口が開くのであれば、まずは捕まえて呑み込めるかどうかを試して、呑み込めなければ諦めるという方法もアリだと感じています。



日光浴姿に会えたらラッキー!


アオサギは、太陽の方に体を向けて翼を半開きにして日光浴をするという行動をします。


不思議なのは必ず翼の内側を光に当てるようにすること。
カワウも翼を広げて羽毛を乾かすという似たような行動をしますが、これは翼の上面を当てることが多いのです。鳥によって翼に光を当てる向きに違いがあるというのは非常に興味深いのですが、その違いの理由は私にはよくわかりません。
また、カワウの翼の乾かす行動はよく見られますが、アオサギの日光浴はいつも見られるというわけではないです。

増え始めたアオサギが問いかけること


近年、アオサギが増えているという話を聞くようになりました。
確かに、私が鳥を見始めた35年程前は、首都圏の野鳥観察会でアオサギが現れるとその珍しさから、望遠鏡を必死になって覗いて記憶があります。繁殖地も北日本に限られていたのですが、最近は全国的に記録があるようです。 

増加要因はよくわかっていないのですが、下水処理が進んで水質改善されて魚が戻ってきたことやコイやフナの放流が盛んに行なわれたことなどでアオサギの餌となる魚が増えたことが挙げられていました。
それらの理由もあるかと思いますが、先日四国で長年野鳥観察をされているYさんからお聞きしたことはとても刺激的な内容でした。 
「日本は海外から膨大な量の食べ物を輸入しているのだから、その分どこかが富栄養化しているはず。どんなに下水処理をしても取り切れないものが川に流れ込んでいて、水は透明に見えていても実際は水が肥えていて水質改善の程度以上に魚が増えているのだと思う。それがアオサギの個体数増加と関係あると考えてもおかしくないと思うけどなぁ」  
日本の食物の海外からの輸入量と河川の魚類の増加の因果関係を実際に証明するのは非常に難しいでしょうけれど、これだけ食物自給率が小さい国ですから、どこかにバランスの不自然さが生まれているという予想は、大きな間違いではないと思っています。  

アオサギが増えていることと、自分の食生活がつながっていると考えたことはそれまでなかったことですが、そのお話を伺って以来、今まで以上にスーパーの買い物で原産国を確認するようになりました。食べ物の選び方と野鳥の増減に関係があるかもしれないという感覚があると、国内産を選ぶ意味も以前とはまた一つ変化をしてきます。 

自分の「食の選択方法」を野鳥の増加に照らし合せる時間が生まれたことは、感性がまた一つ豊かになったと感じています。アオサギに感謝する毎日です。


撮影地:
神奈川県(綾瀬市、相模原市、茅ヶ崎市)、群馬県(館林市)、埼玉県(入間市、川越市、飯能市)、東京都(日野市)、新潟県(上越市)、北海道(七飯町)


お勧め機種:
アオサギは広い水辺にすむので、明るくて高倍率の光学機器を選ぶことをお勧めします。望遠鏡を持っていくと観察には非常に便利ですし、長い時間覗いているとさまざまな行動が見られるので傾斜型のほうが目は疲れにくいです。平地での観察が多いので、重さよりも倍率に重点を置いて機種選びをされるとよいでしょう。

<双眼鏡>
エンデバーEDシリーズ


<望遠鏡>
エンデバーHDシリーズ



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