名前は有名でも…


今回はヒバリを紹介します。



大きさは17cmで、スズメより一回り大きいくらいです。
人の名前や芸名、団地などの名称にもよく使われますし、東北ご出身でご年配の方ならば国鉄時代の特急列車名で馴染みがあるかもしれません。
しかし、実際に見たことがありますかと問われると、首を縦に振ることができる人はそう多くないのではないでしょう。
では、ヒバリは珍しい鳥なのでしょうか? 
ヒバリは、どこにでもいる鳥ではありませんが、見ることが難しい鳥ではありません。早速、彼らの好む環境へでかけてみましょう。

広い空と開けた草地


ヒバリが好む環境は、広い空と開けた草地があるところです。




草の丈は、足首から膝くらいまでで、所々に地表が見えているような場所が適地です。



海岸の砂浜でまばらに草が生えているような場所にもいます。オオヨシキリがすんでいるような丈の高いヨシ原や、地表全体が薮で覆われているようなホオジロモズが好むような樹林帯が近い草地ではあまり見られなくなります。
大きな川の河原や河川敷、広い畑にも生息していますが麦畑が特に好きで、野菜の畑では数が少なくなります。畑で観察する場合は決して農地には入らず、農道にそって移動するようにし、農家の方に会ったときは挨拶を心がけてください。

地味で見つけにくい鳥


ヒバリは頭から背、尾羽にかけては黒斑のある黄色みのある淡い褐色です。
頭に冠羽と呼ばれるやや長い羽毛があり、興奮したときやさえずるときなどに立てることがあります。今まで紹介したなかでは、オオヨシキリに次いで地味な鳥かもしれません。
「地味な鳥ならば見つけにくいでしょ?」と思われるかもしれませんが、2月下旬ころから初夏までは、ちょっと気をつけていれば見つけられますのでご安心ください。

青空で羽ばたきながら鳴き続ける


ヒバリを見つける簡単な方法は、天気のよい日にさきほど紹介した環境にでかけることです。しばらくすると、こんな声が聞こえてくるはずです。



「あ、この声なら聞いたことある!」という人も多いのでないでしょうか。声のする方向に目を動かすと、小さい黒い点が空中でほとんど動かずに浮いているのが見えると思います。これがヒバリです。



縄張りを主張し、雌を呼ぶために鳴いています。複雑ながらも耳に心地よい声で途切れなく鳴き続けるヒバリを観察していて、いったいいつ息継ぎをしているかと心配になりますが、実は鳥は息を吐くときだけではなく、吸うときも声を出しているのです。
どの声が吸うときで、どの声が吐いているときの声なのか、考えながら声を聞くのも楽しいものです。正確な答えを私は知らないので申し訳ありませんが…。

真っ黒ではないヒバリを観察しよう!


上空高くを飛んでいるヒバリを双眼鏡で見ると、空の明るさの差で色が潰れて黒く見てしまい、ほとんど色が分からなくなってしまいます。



ヒバリだとわかっていても、色がしっかり見えないと「見た!」という印象はなかなか残らないものです。

そこで、ヒバリの色をしっかり観察するいい方法をお伝えします。
それは「座ってヒバリが近くに降りてくるのを待つ」です。
なんて気長ことを…と思われるでしょうが、飛んでいるヒバリをしばらく観察していると、上空から少しずつ降下を始め、スーッと草むらに降りるシーンに出会えるでしょう。
何度か舞い降りた場所が分かったら、その場所を見下ろせるような少し高い場所を周辺に探します。河原の土手や堤防などが適地です。

そこでは鳴きながら飛び上がったときにも、しばらくは目線と同じ高さで観察できますし



縄張り争いなどでヒバリ同士が追いかけっこをしているシーンが見られれば



ヒバリの特徴である外側の尾羽にある白い線や翼の縁にある白い部分を確認できます。



空よりも地上が好き!?


しばらく座って見ていると、降りる場所や飛び上がる場所が一定の範囲内になっていることがあります。
それはヒバリにとって重要なさえずりのポイントがそばにあることのサインです。
飛んで鳴いていることがついつい目立つヒバリですが、実は一日のうち、上空でさえずっている時間よりも地上でさえずっている時間の方が長いというデータがあります。
そのため、地上のヒバリ観察は、お気に入りの地上さえずりポイントを見つければよいのです。
周囲より少し高い場所に出ている草や



石の上



などに注目して見てください。
望遠鏡で観察すると、運が良ければ図鑑に描かれている後ろ指の爪の長い様子も見られるかもしれません。

地上のヒバリがわかるようになったら


地上のヒバリを見つけるコツがわかってくると、ヒバリのさまざまな生活の一面が見えてきます。例えば、縄張り争いをしないで2羽がそばにいる様子が観察できることがありますが、これはおそらく番になったヒバリでしょう。



雌雄の見分けは難しいですが、さえずっている雄の隣で平然と餌を探すヒバリがいれば、それは雌の可能性が非常に高いです。
また、乾いた砂地で全身の羽毛を逆立たせて翼をばたつかせているヒバリに会うこともあります。



これは水浴びという意味合いなのですが、“砂浴び”といいます。羽の手入れの一つで羽についた寄生虫などを除去する効果があると言われています。

世界的に姿を消しているヒバリ


昔はどこにでもいたヒバリでしたが、近年は農業の後継者が少なくなって、麦畑が減ったり、畑が宅地化されたり、放置される農地の増加から草丈がヒバリの生息条件と合わなくなるなどして、急速に数を減らしています。

1970〜80年代は海岸線の埋め立てが進み、一時的に広い草地ができたことでヒバリが増加した時期もありましたが、今ではそこも工場やレジャー施設ができたりして、ヒバリの生息には不適な環境になってしまいました。

以上のような理由のほかにも、環境汚染や農薬の悪影響、農業の機械化による繁殖成功率の減少などが理由として挙げられることもあります。
しかも、ヒバリの減少は海外でも確認されており、ヒバリは保護対策が早急に必要というのが世界中の鳥類保護団体の共通認識となっています。

私はヒバリがいつまでも日本の空で春を伝えてくれるためにできること(例えば、国産の麦を使った製品を購入して日本の中で麦畑を減らさないようにするなど)を考えて行動に移していきたいと思っています。



撮影地:
愛知県(田原市)、鹿児島県(出水市)、神奈川県(開成町、座間市)、高知県(高知市)、埼玉県(川越市)、千葉県(木更津市)、長野県(軽井沢町)、新潟県(佐渡市)


お勧め機種
ヒバリは空を飛んでいるシーンで発見をすることが多いので、飛んでいる姿が捉えやすい8倍程度の双眼鏡が役立ちます。地上でさえずっている様子をしっかり観察したいと思えば望遠鏡を持っていくと観察がより充実します。

<双眼鏡>
エンデバーED II 8320 : 売価33,000円(税別)
エンデバーED II 8420 : 売価39,000円(税別)
エンデバーED 8545 : 売価37,905円(税別)

<望遠鏡>
エンデバーXF 60S : 売価37,905円(税別)
エンデバーHD 65S : 売価75,048円(税別)



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