憧れの鳥、キビタキ!


今回はキビタキを紹介します。



黄色と黒の特徴的な配色は野鳥図鑑の表紙や春のウォーキングPRポスターなどに登場することも多い鳥ですので、名前は知らなくても姿を知っている人は多いのではないでしょうか。
大きさは13〜14cmでスズメより一回り小さいくらいです。春になると東南アジアの国々から日本に子育てのためにやってくる夏鳥。
雄はたいへん美しい声でさえずり、バードウォッチャーにとって憧れの鳥の一つです。

地味な雌


雄がとても綺麗な姿である一方、雌はたいへん地味な色をしています。



そのためか、観察できたときの感激が雄に比べて少ないようで、雌が現れてもちょっと見ておしまいというバードウォッチャーがベテランになるほど多くなる傾向があります。
しかし、私はこのなんとも渋い色合いが大好きです。
また、雌の色合いは卵を温めるためや雛に餌を運ぶときに天敵に気づかれにくいなどの意味があることを知ると、雌の羽毛一枚一枚の色の奥深さ、そして雄と同様の美しさを感じます。
もし、皆さんが雌に出会えたときは、彼女の羽毛のもつ神秘もぜひ観察してほしいと思います。

まずは里山や低山帯の雑木林、そして高原の森へ出かけよう


図鑑でキビタキの生息環境を調べると、平地から山地の林などという表記が多く見られます。
もう少し具体的に解説すると、里山や山の麓でドングリのなる木とスギやヒノキなどが混在する林がひろがり、林の中を飛び回れるような空間があるような環境が好みです。



「どういう場所なのか、やっぱりピンと来ない!うちの近所にそんな場所は見つけられない〜」と思った方は、郊外に近年整備されることが多い広域の公園で『里山』と名前がついていたり、その園内に雑木林エリアがあるところヘ行ってみましょう。キビタキの来ている可能性が高いです。

実は標高が高くてもキビタキはいます。
高原(例:別荘地などになっている地域)や山間の湖のそばにある森林にいることも多いので、そのような場所ではキビタキの声がしないか、耳を澄ましてみるのもお勧めです。標高が高い生息環境では光が多く差し込む林も多いので、探しやすいことがあります。



探し方は、“林の中を眺めるように”


図鑑の写真では、しっかりと全身写っていることがほとんど。そのため、キビタキを探しに行けば、必ずそのような状態で観察できると勘違いされてしまうのですが、実際はなかなか見つけられないのです。
この画面の中にキビタキがいるのですが、どこにいるか分かりますか?




クリックすると拡大されます


キビタキを含む小鳥類は、猛禽類や肉食獣などに天敵に狙われているため、基本的には見つけにくいところにいます。そのため、探し方にはコツがあります。

キビタキは林の中の枝で鳴いていることがほとんどです。
まず声のする方向を見つめつつ林の中全体を眺め、飛び立ったときをしっかり追跡することが発見の近道です
声がしたら、まず林の中を見渡せる場所を探しましょう。
画像Aの付近で声がしたら、Aを見つめつつ、目を動かさずにBの部分に注意をするような感覚です。



見つけるためには一点に集中して見ないということが重要で、言葉で表現すると「見つけるためには、探さない」という感じです。始めのうちは難しいかもしれませんが、トレーニングを積んでこの方法をマスターしましょう。

シジュウカラの観察でも感じられたと思いますが、小鳥の観察というものは枝がかぶっていたり、葉の陰になっていたりして全身をしっかり見るチャンスは少ないものです。
しかし、木々の枝や葉の間からキビタキの姿をきちんと捉えられる機会がないわけではないので、そのような場所を求めて静かに動いて探して見てください。





鳥の方向を見つつ、足を一歩だけ小股(肩幅くらい)で移動し、鳥が飛び立たなければまたもう一歩動くというようにすると、警戒されにくいです。



キビタキの気持ちになって、林を見る


林の中でキビタキに出会ったら、止まっていた枝を画面の中に写し込んだ画像をコンパクトデジカメで撮るようにすることをお勧めします。なんとなくいつも似たような風景になってくるのがわかります。



この画像は、どことなく3枚目や4枚目の画像に似ていますよね。
そのうち撮影をしなくても林に入っただけで「この場所ならキビタキがいそうだ」とか「この林はキビタキが好きそう」と感じるようになると思います。

そうなったら、もうあなたはキビタキの心がわかるようになったといってもいいでしょう。
鳥の気持ちになって自然の中を歩くことができるようになると、自然の中を歩くことそのものが楽しくなり、とても贅沢な時間を過ごせます。そうなると、林でキビタキに例え出会えなくても、その日がつまらなかったということはなくなります。私はそんな1人です。


黄色い腰がアピールポイント


キビタキの雄がさえずっているときを観察できたときに、ぜひ注目してほしい部分があります。
腰の黄色です。
この部分はさえずっているときに大きく膨らませたり、目立つようにしています。





おそらく雌へのアピールポイントなのでしょう。
また、雄同士の喧嘩でもこの腰の黄色を膨らますので、ほかの雄に縄張りを主張する意味もあると考えられています。
しかし、天敵や人間の存在に警戒をしたときはこの黄色い部分は隠してしまいします。



もし黄色い部分を隠しているキビタキに出会ったら、周囲に猛禽類がいないか確認したり、あるいは自分がキビタキに警戒されていないかを考えてみてください(注:渡りの時期には黄色い腰は膨らませないので、警戒しているとは限りません)。


のんびりトラベラー?


キビタキの観察に適した時期は、もちろんさえずりが聞かれる春〜初夏です。
秋になるとまた東南アジアの国へ渡ってしまい、冬の間は見られなくなります。

しかし、キビタキはかなりのんびりと日本で過ごす鳥で、日本国内の野鳥の記録をまとめた資料などによると、11月までキビタキは記録されています。
綺麗な声でさえずりは聞かれませんが、キビタキはほかの夏鳥がほとんどいなくなった木枯らしの吹く直前まで楽しめる夏鳥です。
キビタキに会える期間は長いので、ぜひ今年のうちにキビタキに出会っていただきたいと思っています。頑張ってください!



撮影地:
神奈川県(清川村)、埼玉県(所沢市)、栃木県(日光市)、長野県(長野市、信濃町)、新潟県(新潟市)、福島県(猪苗代町)、北海道(七飯町)

お勧め機種
キビタキは林内を飛び回るので、主に双眼鏡での観察がよいと思います。明るいEDレンズ採用のものが最適ですが、身近な里山を気軽に散歩するときには小型双眼鏡をバッグに入れていくのもよいと思います。

<双眼鏡>
エンデバーED II シリーズ
エンデバーEDシリーズ
オーロスシリーズ



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