コゲラと同じキツツキの仲間


今回は、アオゲラという鳥を紹介します。第24回で取り上げたコゲラと同じキツツキの仲間です。



大きさ30cmほどあるので、キジバトくらいのサイズです。背中が緑色で、頭部が2カ所赤く、お腹に黒い斑点があるのが特徴です。北海道と沖縄には生息していませんが、本州・四国・九州(屋久島以北)の平地から山地の雑木林では普通に見られます。

漢字で書くと“緑啄木鳥”




写真をご覧になって「アオゲラのどこが“青い”の?」と思われた方がいるかもしれません。以前紹介したアオサギとも色が全然違います。

先に答えを言ってしまうと、アオゲラのアオは「緑」なのです。
日本は色に対する表現がとても豊かな国で「ミドリ」も「アオ」と表現します。
新鮮な野菜の様子を「青々とした葉」というのが良い例なのですが、英語を話す外国人バードウォッチャーにとって、このような日本の色の概念はかなり複雑な状況で、理解するのは困難を極めるようです。

ちなみにアオゲラは英語でJapanese Green Woodpecker(ジャパニーズ グリーン ウッドペッカー)といい、日本の緑色のキツツキという見たままです。


日本にしかいない特産種、アオゲラ


実はこのアオゲラは、セグロセキレイと同じく日本にしかいない、貴重な種類です。
先ほど外国人バードウォッチャーとアオゲラの名前の話をしたとお伝えしましたが、彼は日本に来たときに見たい鳥の上位にこの鳥を挙げていました。
世界中にアオゲラに似た色合いや模様のキツツキがいますが、彼の視点では日本のアオゲラの目は黒っぽく見えるので一番かわいいとのこと。
それを聞いて、さらにアオゲラを大事にしたいと思うようになりました。



枯れ木や枯れ枝がお気に入り


ハトくらいの大きさで比較的大きく、背中の緑や頭部の赤が鮮やかですので、林の中ではすぐに見つけられそうなアオゲラですが、実際はなかなか見つけるのが難しいキツツキです。
図鑑では鮮やかな模様も自然の中では周囲の色に溶け込んでしまうのです。

この2枚の写真の中にいるのがわかりますでしょうか?
(問題の画像の後に解答が表示されますのでゆっくりスクロールしてください)



<問題1>














<解答1>
 (クリックすると拡大されます)







<問題2>














<解答2>
(クリックすると拡大されます)


また、人の姿を見ると木の裏側に回り込んだり、木の幹で光の当たっていない方向へ移動したり、





じっと動かずに木のコブのようになるなど、




身を隠す行動をするもの理由の一つです。しかし、そんなアオゲラに会える確率を高める方法があります。

前回紹介したキビタキのいた雑木林をもう一度訪ねて、まずは森の中に太めの枯れ木や枯れ枝のある太い木で、穴がたくさん開いているものを探してください。



それはアオゲラを始めとしたキツツキ類が木の中にいる虫などを探してつついたり、巣穴として利用するために開けたもので、一本見つけることができれば、同じ林の中でそのような場所をいくつか見つけられるでしょう。
アオゲラはそのような枯れ木や枯れ枝を巡回して、食べ物を探しています。かなりボロボロに腐った状態でも、アオゲラには食べ物である虫を捕えるための大事な場所のようで、気に入った場所はかなり長居することもあります。





アオゲラに会いたならば、アオゲラと同じように枯れ木と枯れ枝を確認ながら地道に歩き回るのが最適です。


公園にもやってくるようになったアオゲラ


コゲラのときにも都会への進出があるとお伝えしましたが、アオゲラも同じような傾向にあるようで、街の中にある比較的高さのある樹木の多い公園などでも姿を見かけるようになりました。




戦後の公園に植えられた木々の幹が年月を経て太くなり、枝が一部枯れているようなものを見かけることが多くなったことも一因のように感じています。
私が毎月野鳥の記録を取り続けている公園の桜の木々にもアオゲラがよく現れています。
しかし、いつもいることは少なくて、観察できた日以降に姿を消し、またしばらくすると公園に戻って来るといった行動パターンが多いので、アオゲラのつついたような木や枝がある公園があったときは諦めずに何度も行くことが大事です。


木屑が入らないように


以前、アオゲラを描くためにアオゲラを飼育している動物園を訪問しました。その際に、嘴の根元にある鼻の穴が羽毛で覆われているのを見て感心しました。



普通の鳥では鼻の穴が見えることが多いのですが、キツツキは木をつついて木屑が鼻に入らないように覆われているのです。
生きものが長い歴史の中で獲得した形態には、いつも驚かされます。


子育て中の巣穴を見つけたら


都会でも繁殖するようになったアオゲラは、人間から非常に見やすい場所に巣穴をつくることがあります。



そのような巣穴は、アマチュア野鳥カメラマンの恰好の撮影材料になり、巣にやってくるアオゲラをしっかり写そうと巣のすぐ目の前に大砲のような望遠レンズが並ぶことがしばしばあります。
しかし、その様子を一歩引いて見ていると、親鳥はすぐそばまできているのにカメラマンを警戒して雛に餌を与えることができていない、非常にかわいそうな状況になっていることが多々あります。

私も資料用に時々アオゲラの営巣の様子の撮影をしますが、木の陰に隠れながら最低でも20m以上は巣から距離を保ち、5分その場にいて親鳥が戻ってこなければ1時間は巣穴が見えない場所まで離れるようにしています。
いい写真が撮れなくても、3回それを繰り返したら次回に繰り越し、2-3枚でもいいものが撮れていたら、それでその日は終了にしています。

野鳥の写真を撮るときや観察をするときは、彼らの生活がそこにあり、そこに命が存在することに想いを巡らせることが大切だと考えています。

野鳥撮影や観察のマナーについてお話しするときは、少しでもいい写真を撮りたい方やから感情的に反論されてしまうケースが多いのですが、「自分がされたら嫌なことは野鳥にもしない」という観点で考えてみてほしいと思っています。

例えば、アオゲラの巣の前でずーっと親鳥の飛来を待ちながら写真を撮ることは、「自宅の目の前で、自分の家の中にいる自分の子供に見知らぬ人からずっと望遠レンズを向けられている状態」だと想像してください。気持ちの良い人はまずいません。では、それはしない、という感じです。

野鳥に会いにいくことは、鳥のお宅にお邪魔することです。
ご近所付き合いと同じように、粗相のないようにしたいもの。
いつものように同紳士淑女の振る舞いをして、鳥たちに次の訪問も歓迎してもらえるように心がけたいものです。



撮影地:
埼玉県(入間市、狭山市)、東京都(三鷹市)、長野県(信濃町)、山梨県(北杜市)

お勧め機種
葉の多い季節の観察は、明るいEDレンズ採用の双眼鏡を使うのがよいと思います。初心者の方ならば、望遠鏡はレンズの方向と視界の関係がわかりやすい直視型のものが便利でしょう。また、雑木林の道は上り下りも多少あるので、口径の小さい60-65mm口径が比較的軽くてお勧めです。

<双眼鏡>
エンデバーED II シリーズ
エンデバーEDシリーズ
スピリットEDシリーズ

エンデバーHDシリーズ(直視型)
エンデバーXFシリーズ(直視型)


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