トビからのステップアップ!


これまで猛禽類はトビしか紹介したことがありませんでしたが、第一回から読んでくださっている方ならば鳥の観察にもずいぶん慣れてきたことと思いますので、猛禽類の識別もトビからステップアップしていきましょう。
今回はミサゴを紹介します。

全長50-66cmで翼を広げると1.2-1.7m。数値の上ではトビ(全長58-66cm、翼を広げると1.2-1.5m)と多少差がありますが、実際に目にするときはほぼ一緒に見えます。
トビと大きく違う点は、飛んでいるときにトビの下面が全体的に濃褐色であるのに対し、ミサゴは白い部分が目立つことです。





魚が主食


ミサゴは水辺にすむ猛禽類の一種です。
以前はトビと同じタカ科に属しましたが、近年研究が進んでタカ科からミサゴ科という独立したグループになりました。
図鑑には海辺や大きな川、湖などに生息するという記述がありますが、ミサゴに会うにはもう少しミサゴの好む水辺環境について知っておくと可能性が格段に上がります。
それは、ミサゴの主食である魚の捕まえ方が鍵です。 

ミサゴは羽ばたきながら上空で一点に止まり、魚を見つけて狙いを定めて急降下して水の中へ豪快に飛び込みます。










ミサゴは体が大きいので水面が狭い場所や、大きく波打つ状態では魚が見えなくなってしまうので、狩りがうまくできません。
つまり、ミサゴには水面が広く穏やかな場所を探すのが重要なのです。そのような環境は、海辺では港の中、



河川では堰堤付近や



河口域が適しています。



また、魚が放流されているダム湖のような場所は、ミサゴに非常に魅力的な環境でしょう。



地域によっては農業用の溜池なども重要な採餌環境になっています。



ミサゴは移動能力の非常に高い鳥ですので、一度出かけていなくても、何度か足を運んでいれば、そのうち上空を飛ぶ姿に会えると思います。




トビとの見分けも慎重に


ミサゴは下面が白っぽいことでトビと見分けられると書きました。
図鑑などで見れば一目瞭然で見分けは難しくないように感じられるかもしれませんが、空をバックに飛ぶ実際のミサゴの姿は光とのコントラストが強く影響して黒っぽく見えてしまうこともあり、識別に注意が必要な場合があります。



トビとの見分けでまず重要なのが、尾羽の形。ミサゴは折り畳んだ扇子のような形であるのに対し(注:羽の生え変わりの時期などは形が変化することもあります)、トビの尾羽はお好み焼きのフライ返しのような形をしています。



熟練者の中には、翼の形や長さ、尾羽の長さと翼の長さの比率、頭の大きさなどの違いを瞬時にミサゴと見抜く強者もいますが、初心者はまずトビをしっかり観察し、“トビらしい形”を目で感覚的に覚え、トビと違う点がある猛禽類がいたら、注意して観察するということを続けていくことでミサゴとの違いを認識していくのがよいでしょう。


ウミネコと間違えないように


ミサゴとの見分けでもう一つ注意したいのがウミネコです。
「カモメ類と猛禽類を間違えるなんて、大きさの全然違うし、そんなことないでしょう?」と思われた方もいるでしょうが、飛んでいるときに見える白い部分の範囲が類似していることで見過ごしてしまうことがあります。
海の上をのんびり飛んでいる姿からきちんと確認せずに「ウミネコ」と思い込んでしまい、ミサゴであることを最初から検討しないということが、ミサゴとの出会いの機会を少なくしている場合があります。
海を飛んでいる中型以上の鳥を見たら、必ず双眼鏡で観察することが大事です。



翼の先が指のように分かれていればミサゴ、尖っていればウミネコですが、ミサゴも翼をすぼめると尖ったような形になりますので、嘴の長さなども注意して観察しましょう。


止まっている姿を探してみよう


何度か飛んでいるミサゴに出会ったら、今度は止まっているミサゴを探してみましょう。
ミサゴは水面を見渡せる場所に止まることの多い鳥です。
川や海のそばにある、大きな木や鉄塔などは必ず確認するようにしましょう。山間では尾根の上などの大きなお腹の白さが目印になることもありますが、背中は濃い褐色なので意外と保護色になっています。

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河口では満潮ともに遡ってくる魚を杭の上などに止まって待ち伏せしている姿が見られます。

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肉眼では矢印に示したような小さいものになることがほとんどですが、望遠鏡で観察すれば頭を動かして魚の動きを探る行動がわかるでしょう。



何年も使って大きくなる巣



通常ミサゴの巣は、人を寄せ付けない断崖絶壁や大木の上に作られ、観察は非常に難しいものです。
また、そのような場所は限られるため、何年も使われることが多く、巣は大きくなることもしばしばです。

近年、鉄塔などの人工物に作られる例が出てきて、以前に比べると巣での行動が一般のバードウォッチャーにも観察される場所も出てきました。
しかし、彼らは巣に人が近づくことを極度に嫌う生き物です。
ミサゴのためを思えば、巣の観察は控えるべきだと私は考えています。
そのような理由でミサゴの巣の観察の経験がなかった私ですが、警戒をされない距離を十分保った状態で観察できる場所の情報を昨年いただくという幸運に恵まれ、現地に赴きました。

それが写真の巣です。



四国のある山の斜面の大木に作られたもので、地元で鳥獣保護員をしている方に同行して、現地で警戒されない距離と教えていただいた約500mを保って観察してきました。
巣にいるのが雄で、雌が戻ってくるのを待っているところです。
この巣は5年以上使われていていますが、最近木が枯れてしまい、おそらくあと2-3年で倒れてしまうだろうとのことでした。

近年は台風が大型化して風の強さが増しています。
風によって大きな木が倒れやすくなっていることが、ひょっとしたら鉄塔のような人工物に巣を作るミサゴの出現に関与したのかもしれません。



撮影地:
香川県(琴平町)、神奈川県(開成町、真鶴町)、高知県(高知市)、埼玉県(飯能市)、静岡県(伊東市)、徳島県(徳島市)、新潟県(佐渡市)、三重県(伊勢市)

お勧め機種
飛んでいる姿を見る機会の多いミサゴの観察は、機動性があり明るいEDレンズ採用の双眼鏡を使うのがよいと思います。河口やダム湖の周辺で止まっているミサゴとの出会いもあるので、望遠鏡が役立つ機会も多いでしょう。一度止まるとじっとしているので、直視型よりも長時間覗いていても疲れにくい傾斜型での使用をお勧めします。

<双眼鏡>
エンデバーED II シリーズ
エンデバーEDシリーズ

エンデバーHDシリーズ(直視型)
エンデバーXFシリーズ(直視型)




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