同じ場所でも、季節を変えて


4月になって皆さんのご自宅の周りもまぶしい緑に包まれていることでしょう。冬の間にユリカモメキンクロハジロが集っていた池のある公園は、どうなっているでしょうか? 冬鳥として日本に飛来する彼らはすでに北国へ飛び立ってしまっていますが、まったく鳥がいないということはありません。同じ場所でも、季節を変えて訪問することで発見があるというのが、バードウォッチングのおもしろさでもあります。

まず、静かになった水面にちょこんと浮いている鳥の姿がないかを探してみてください。おそらくカルガモもいると思いますが、カルガモよりもずっと小さくて、潜水を繰り返す全体的に黒っぽい鳥がいたならば、それが今回紹介する鳥、カイツブリです



カモのようで、カモではない


カイツブリは全長27cmで、ちょうどヒヨドリほどの大きさです。肉眼で見ると全身はほぼ黒褐色で、双眼鏡で観察すると頬から頸にかけて赤褐色と嘴の根元と虹彩の淡黄色が目立ちます。


水に浮いている姿は一見小さめのカモの仲間に見えますが、分類では「カイツブリ科」というカモとは別のグループになります。
嘴がカモのように平べったくなくて細長いこと、尾羽がほとんど見えないような状態になっているなど、よく見ると形態に違いがあります。 
博物館の剥製や動物園などでカイツブリを間近に見られる機会があればぜひ確認してほしいのが脚のひれです。
カモの水かきとは、ちょっと違う形をしています。次号で解説を掲載しますので、まずはご自身の目で確かめてくださ〜い!


水辺にヨシなどが生えている場所の存在が大事


カイツブリを観察するには、まず冬にキンクロハジロやユリカモメのいた場所でカイツブリが見つからない場合は、カイツブリの好む環境の“3つの条件”がそろった場所を探してみてください。
最初の2 つは、カイツブリ同様に潜水をして餌を採るキンクロハジロと同じで、「水深がある」と「水の流れがほとんどないか緩やか」であることですが、カイツブリにはもう一つ重要な要因があります。
それは「水辺にヨシなどの草が生えている」ということ。これがカイツブリにとって大切であることは、後ほど解説しますが、このような環境要因をキーワードに足を運んだ場所にカイツブリがいないか、探してみてください。


冬はカモに混じって


カイツブリは水面が凍ってしまわない限り、一年中同じ場所で生活しています。夏の羽に比べ、冬は色が淡くなり、褐色味が増しますので、ほかのカモに混じっているとちょっと見分けが難しいかもしれません。




魚が溜まる川の淀みなどで姿が見られるのも、冬の方が多いようです。



「モグラたたき」ならぬ「カイツブリたたき」?


カイツブリは潜水が上手な鳥です。水の中へ入っては浮かび、入っては浮かび上がるという行動を頻繁にします。
水中では魚やエビなどを追いかけて捕えていますが、体の大きさの割に水中での移動距離があって、潜った後に水面を見回して上がってくるのを待っていると、いつのまにか視野の外に浮いているのです。
以前、カイツブリの潜水平均時間を計ってみようとストップウォッチを持っていったのですが、予想以上に離れた水面に上がってくることが多く、きちんと計ることができずに断念せざるを得なかった経験があります。
その様子を知人に話したら「モグラたたきゲームの鳥版みたいなものだな〜」と表現していました。もしこのゲーム機が開発されたら名称は「カイツブリたたき」でしょうか。


潜る気配は予測できる


最近野鳥撮影に凝り始めた知人とカイツブリを観察していたときのことです。
カイツブリが潜る直前に私が「そろそろ潜りそう」と言うと、そんなことがわかるのかと首を傾げて聞いてきました。そこで、「自分が水に潜る前はどんな気持ちなのかを考えながら観察してみたらわかると思うよ」と言って、双眼鏡を渡して観察することを勧めました。
しばらくして、その人は“潜る直前に、頭の羽毛が寝て、全身をキュッと細める”ということに気づきました。





「いい写真を撮るには、まずは観察だね」 と、その人はそれ以降、撮影に双眼鏡を携帯し、まずは観察をじっくりするようになりました。
持っていく機材が増えて大変だといいながらも、狙っていた瞬間が収められるようにもなったと喜んでいます。バンガード製品カタログの中でも、カメラマンの戸塚学氏と石丸喜晴氏も述べておられますので、カタログをぜひご一読ください。


「浮巣」を作る


私は基本的に鳥の巣を観察することは、繁殖を妨げてしまうのでお勧めしていないのですが、公園などで巣を作るカイツブリは周囲から確認しやすい場所に作ることがあるので、そういう場所では観察時間を1時間10分程度と短めにして見ることは提案しています。
どんなところに巣を作るかというと、それは水面の上。
そのため「カイツブリがいる」ことがわかってしまえば、簡単に見つけることができます。  水草や枯れ葉などをヨシや水面に張り出した木の枝に絡み付けて水面に「浮いた巣」を作ります。



もちろん、場所によっては見えにくいように作る場合もあります。


公園などでは水草が少ないとビニールテープのようなゴミなども利用しています。
また、巣材に発泡スチロールを入れるものがいるようで、より安定した浮力を得る工夫をしているようです。
鳥自身も浮いている鳥ですが、巣も「浮いている」なんて、カイツブリは本当に「浮いている」のが好きなのだなと思います。


雛が孵ると、巣を離れる


生まれた雛は生まれたときから全身が既に羽毛で覆われています。体型は親とほぼ同じですが、頭や背中に縞模様があるのが特徴です。  親鳥は卵がすべて孵化すると、数日で巣から雛を連れて出て行きます。


雛は自力でしばらくは泳げますが、そのうち疲れてくると親鳥の背中に乗ります。保温のためもあるようで、親鳥は背中によじ登る雛を翼の下に入れるようにしています。親鳥がおんぶして泳ぐほほえましい姿を観察することができるでしょう。



雛は甘えん坊?


カイツブリの子育ては、ほかの鳥に比べると雛の面倒を見る期間が長いようです。親鳥とほぼ同じ大きさになった雛が、ピイピイと大きな声を出しながら親に餌をねだる光景を見ることも珍しくありません。


観察していると、潜水はできるようなのですが、動きの速い魚やエビを捕らえるのは技術の習得に時間がかかるようです。
親はさすがに餌を与える回数は減らしているように見えますが、やはり我が子はかわいいのでしょう。餌を運ぶことはなかなか止めません。


外来生物に怯えて生きるカイツブリ


近年、以前は見られた公園の池でカイツブリがいなくなったとか、雛が途中でいなくなってしまうという話を聞くことがあります。

そういう場所に確認に行くと、だいたいブラックバス釣りをしに来た人の形跡があります。ブラックバスは北米原産の肉食性の強い魚で、引きの強さで若い人を中心にルアーで釣りをする人気の魚になっています。日本導入直後は限られた湖沼の魚でしたが、ブームもあって放流される地域が広がり、また違法な放流もあったようで、現在では全国各地で見かけるようになりました。

実際その広がりとカイツブリへの影響は検証が困難なのですが、ブラックバスを駆除した場所ではカイツブリの再確認が報告されていますので、まったく関係ないということではないようです。

釣りの楽しさを否定するつもりはありませんが、人為的に放した生き物が元々そこに生息している生き物に影響が出る可能性への想像力を今よりも広げて欲しいと願う日々です。 
釣りを楽しむ人も自然は好きなことは間違いないはず。
一つ一つ大切なことを話し合って、本来の生物たちの姿の多い日本にしていきたいですね。




撮影地:
群馬県(館林市)、埼玉県(入間市、狭山市)、東京都(大田区、三鷹市)、長野県(信濃町)、北海道(七飯町)


<カタログ請求について>

(Eメール)info★guardforce.co.jp (★を@に変えてお送りください) 
( 電  話  ) 03-3234-6337
(ハガキなどでご請求の場合)
株式会社ガードフォースジャパン
 光学機器カタログ請求係
〒102-0074
 東京都千代田区九段南3-8-11 飛栄九段ビル4F 

またこちらからダウンロードも可能です。 



お勧め機種:
カイツブリは水上にいるので、初心者にも観察しやすい鳥の一つです。
身近な公園などでは鳥との距離も近いですのでポケットサイズのものでも十分楽しめます。EDレンズ採用のものならば、嘴の根元の黄色や目の虹彩などもはっきりわかるでしょう。
行動をしっかり観察したいのであれば、疲れにくい傾斜型望遠鏡がお勧めです。
オーロスシリーズ
スピリットEDシリーズ
エンデバーEDシリーズ

止まっている場所が分かってきたら、望遠鏡を持っていって観察するのもよいでしょう。
エンデバーHDシリーズ(傾斜型)
エンデバーシリーズ(傾斜型)


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