ハクセキレイの、そっくりさん


今回ご紹介するのはセグロセキレイです。



セキレイ科に属します。水辺を好む生態をはじめ、細長い体型や波形に飛行するなど、これまでに紹介した紹介したハクセキレイキセキレイと共通する部分があります。特にハクセキレイに似ていますが、顔の黒色部分が多いことが見分けのポイントです。


ハクセキレイと生息域が重複する地域では、識別に迷うこともあるかもしれませんが、ハクセキレイよりも白黒がはっきり分かれてシックな装いをしていますので、迷ったときは白と黒のコントラストの具合を確認して見てください。
冬になるとハクセキレイが北から移動してくるので、ハクセキレイの数がまだ比較的少ない夏は見分けに自信がない方にとっては、セグロセキレイの姿を覚えるいい時期です。

石がごろごろした河原が好き


水辺が好きなセキレイ類ですが、セグロセキレイは、ごろごろした石が多くて少し幅のある川の中流域が特に好きなようで、写真のような環境であればほぼ間違いなく見つけることができます。



また、川の堰周辺も好きで、堰の下にあるブロックの上などを歩いています。




人工的な建造物にもそれなりに対応して生きている鳥ですが、水と石がごろごろしている場所がないと生活はしにくいようです。稀に海岸に近い河口や干潟や上流域にも時折現れることもありますが、かなり珍しいことです。

外国人バードウォッチャーの憧れ


日本で観察するのはそれほど難しくないセグロセキレイですが、世界的には日本が主な生息地の珍しい鳥です。お隣の韓国やロシア、台湾などで近年観察されるようになったのですが、まだ数は少ないようで、「セグロセキレイを見るなら日本」というのが海外からのバードウォッチャーでは当たり前のようです。セグセキレイは日本人には珍しい鳥と認識はされていませんが、実はいつでもセグロセキレイに会える状況というのは、贅沢なことなのです。

得意技はフライキャッチング!


セグロセキレイは河原で川面に発生する虫などを採っています。水際を歩きながら水面をつついていることも多いのですが、



水際や流れの中で出ている石の上でじっとしながら周囲を見渡し、飛んでいる虫を空中で捕える「フライキャッチング(注1)」と呼ばれる行動をよくしています。


よく虫が飛ぶ場所や採りやすい場所がある程度決まっているようで、私がよく行く自宅の近所の川沿いを歩くと、ほぼ同じ場所でフライキャッチングをしています。





皆さんのご自宅の近くでそのような環境があれば、セグロセキレイにいつでも会えることでしょう。

ベタベタしない関係で、夫婦円満?


セグロセキレイは番(つがい)で行動していることが多く、一羽を見つけるとそばにもう一羽いることがほとんどです。雌雄の見分けは難しく、判断できないこともしばしばですが、二羽並ぶと雌の方がやや背中の黒色が淡くなっています。
しかし、セグロセキレイの番は、つかず離れずのような距離で行動するので、なかなか双眼鏡や望遠鏡の同一視野内に入りません。ベタベタしない夫婦関係ですが、連れ合いが死ぬまで番を変えないことが多いみたいです。
私の5年ほど観察したセグロセキレイ夫婦は、足にけがをしている雌をかばうように同じ雄(注2)がずっと連れ添っていました。
まず雄が餌の多い場所かどうかを見て、そこに餌が多いと雌に譲り、餌が少ない場所で自分が餌探しをしている光景も何度も見かけました。ベタベタしないけれど愛を感じる夫婦関係は、なんとなく古き良き日本のようですね。

河原以外にも出張


セグロセキレイは河原だけでは餌が少なくなってしまうようで、田んぼや畑、グラウンド、広い芝生のある公園などにも現れます。





ただ、この環境はほかの鳥にも魅力的な餌場なので、よく争いが起きているのも事実です。特にハクセキレイとの争いは頻繁で、夫婦で追い出し行動をしていることもしばしばです。
しかし、北からたくさんのハクセキレイがやってくる冬は、その追い出しよりも自分の餌を探す方が大事なこともあるようで、近くで一緒に餌を探している光景も見られます。



減り始めているセグロセキレイ


近年、セグロセキレイが減少しているのではないかといわれています。
近縁種のハクセキレイが繁殖地域の分布拡大をしていて、その勢力に負けているというのが通説になっています。確かにその要因も十分考慮する必要がありますが、私は河川の中流域の環境の変化にも注目する必要があるのではと考えています。
上流のダムの建設によって河川の中流域への砂礫供給が減少しいわゆる河原の草地化が進んでいること、農業従事者減少に伴う河川周辺の田畑の減少などがその例です。
日本古来の自然環境とともに生きてきたセグロセキレイ。日本の原風景の減少とともに消えてしまうかもしれません。そうならないようにしたいものですね。




注1:フライングキャッチとも言われますが、ここでは虫を捕えることに主点が置いて、フライキャッチングとしました。
注2:喉の白い斑がほかの個体よりも大きかったので個体識別ができました

撮影地:
神奈川県(綾瀬市、相模原市、茅ヶ崎市)、群馬県(館林市)、埼玉県(入間市、川越市、飯能市)、東京都(日野市)、新潟県(上越市)、北海道(七飯町)


お勧め機種:
<双眼鏡>
エンデバーEDシリーズ


<望遠鏡>
エンデバーHDシリーズ



One Comment

  1. はじめまして。コメント失礼します。
    鶺鴒を探していますが、石の多い河原へ何時頃に行ったら良いのでしょうか?
    写真を撮るのは難しいでしょうか?

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