シジュウカラより小さいメジロ


双眼鏡の使い方にもだいぶ慣れて、的確に視野内に捉えることができるようになってきたと思います。夏にシジュウカラで訓練した「木々にいる小鳥の探し方」をステップアップさせるために、今回はシジュウカラよりも小さい鳥を双眼鏡で捉えられるようになりましょう。
そのトレーニングに最適な鳥がいます。メジロです。


メジロは全長12cmで、図鑑の数値ではスズメよりも2cmほど小さいのですが、体がシジュウカラよりもややほっそりとしているなどから実際はもう少し小さく感じることもしばしばです。一年中に日本に生息し、緑の多い公園や郊外の雑木林、庭先などにもやってきます。


頭から背、尾羽にかけて黄緑色で夏は葉陰に入ると羽毛の色が保護色となって見つけるのはとても難しくなります。さらに葉の裏に隠れてしまうほど小さいので、姿が捉えられてもなかなか全身をゆっくり観察できません。



そこで葉が落ちていく時期ならば、葉に隠れてしまうような大きさの小鳥を見つける術を無理なくステップアップできるというわけです。


カキの木を探そう


しかし、闇雲に探しまわるのは得策ではありません。メジロには探し方のコツがあります。ジョウビタキと同じように、メジロの好む木の実を探しましょう。
メジロがよくやってくるのはカキの実です。民家の庭先にたわわに実のなっていることもありますし(注1)、近年は大きな公園や植物園などでも見かけることがあります。
まだ熟していない硬いものにはメジロは見向きもしませんので、身近な場所で“メジロの眼”になって熟したカキの実を探しながら歩き、見回りに来ているメジロがいないか、見ていきましょう。



ヒヨドリやムクドリがいないと困る?メジロ


実が熟して見るからに美味しそうな実があるカキを見つけたら、本格的にメジロが来ているか調べる方法があります。それは、そのカキの木に、ヒヨドリムクドリが来ているかを見ることです。
メジロよりもずっと大きいこれらの鳥が実につつくとしっかりと穴があき、嘴の小さいメジロも簡単に果肉を食べることができるのです。



ヒヨドリはカキの実を独占しようとメジロを追い払う行動を頻繁にするので、メジロがかわいそうなんて思う方も多いかもしれませんが、メジロはメジロで彼らに美味しい実を食べやすくしてもらっているので、ヒヨドリやムクドリがいないと困ってしまうのです。


小さい体が役に立つ


ヒヨドリに追われたメジロはそんなに遠くには逃げません。
小さな体ですので小回りが利くことと、近くの薮に逃げ込むと体の大きなヒヨドリはその中までは追ってきません。ヒヨドリがカキの実からいなくなるまではそこで順番待ちをして過ごしている姿もよく見かけます。


カキの実以外も大事な食べ物


メジロの姿や動きに目が慣れてきたら、ほかの場所にもやってきていないか家の周りを歩いて調べてみましょう。
ジョウビタキは赤い実探しでしたが、同じ要領でメジロの嘴の大きさに合う実がないか見てみましょう。ジョウビタキも食べているツルウメモドキのほか、コムラサキシブやムラサキシキブ、


ヌルデ(注2)


などがあれば、きっといずれやってくるでしょう。
街路樹によく植えられている北米原産のハナミズキの実にもメジロが来て食べていることがあります。



冬のメジロは何を食べている?


では、メジロは木の実がなくなったら何を食べているのでしょう?
普段はあまり降りない地面や水辺の草地などで餌を探すこともあれば



樹木の割れ目に潜む虫などを探していることもあります。


ただ、いつもきちんと食べ物にありつけるようではなさそうです。
そこで私の家では厳冬期に限って、庭に餌を置く年がありますが、メジロはミカンの輪切りが一番好きです。
枝先などにぶら下げているとすぐにやってきます(注3)。



花の蜜も


メジロは甘いものが好きで、よく花の蜜を吸います。
主にウメや桜、そしてツバキやサザンカなどです。ウメの花が咲いているときは葉もないので観察はしやすいのですし、ツバキやサザンカは、花が大きいので蜜も多いために、しばらく吸い続ける姿が見られます。
花と一緒に鳥も楽しめるので、とても得した気分になります。




メジロが観察できるようになると


秋から冬にメジロの探し方や見つけ方などをしっかり訓練しておけば、メジロを始めとするスズメよりも小さい大きさの鳥をいつでも自力で見つけ、楽しめるようになります。
初夏以降の緑の葉が出ている時期でも観察できるようになっているでしょう。この「スズメよりも小さい大きさの鳥」を見つける力がつくと、図鑑に載っている綺麗な色の小鳥類との出会いが格段に増えます。もちろん、メジロのかわいい姿も一年中楽しめるようになれます。


メウグイス餅はメジロ餅?


ウグイス餅という和菓子があります。餡を求肥で包み、上から青大豆の粉をまぶしたもので、早春に店頭に並びます。
写真をご覧になっていてお読みの方はもうお気づきかと思いますが、実はこの青大豆の粉の色とメジロの羽色がそっくりです。実は名前の由来になっているウグイスはもう少し地味な緑褐色で、メジロのような緑色でありません。


この話題になるとよく「昔の人はウグイスとメジロを間違えていた」といわれるのですが、昔の人の描いた書物のウグイスやメジロはきちんと描き分けられていることが多いので、私はきちんと見分けができていたと考えています。

では、なぜお菓子の名前にメジロではなく、ウグイスを採用したのでしょうか? 
とても不思議に思って調べてみたところ、“ウグイス餅”と命名したのは豊臣秀吉と言われているようですので、私があの世に行ったときには、ぜひ豊臣秀吉さんにお会いして一緒にお茶を飲みながらぜひ聞いてみたいと思っています。
鳥が好きだと、あの世でもやりたいことができてしまいます。



撮影地:香川県(丸亀市)、神奈川県(海老名市、座間市)、群馬県(館林市)、埼玉県(入間市、狭山市、所沢市)、静岡県(伊東市)、東京都(台東区、調布市)、長野県(長野市)


お勧め機種
メジロは小さくてすばやく動き回る鳥ですので、今回は双眼鏡での観察をお勧めします。また、倍率もなるべく低い方が捉えやすいため、以下の機種の8倍が適しています。


<双眼鏡>
オーロスシリーズ
エンデバーEDシリーズ
スピリットEDシリーズ


注1)民家の庭先での野鳥の観察は誤解を受けないように注意しましょう。
注2)ヌルデはウルシの仲間ですので、肌の弱い人は十分注意してください。
注3)ご近所には鳥嫌いの人がいることもありますし、アパートやマンションの敷地内ではルールがある場合もあるので十分注意しましょう。また、近年は公園などに鳥の餌を置く人がいますが、公有地での生き物への餌やり行為はトラブルになるので絶対にやめましょう。


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