ちょっと不格好な鳥


今回はまんまるな鳥を紹介します。シメです。
以前紹介したカワラヒワに近い、アトリ科の鳥。
全長18cmでスズメより大きいのですが、尾羽が短くてずんぐりむっくりの体つきなので、数値よりも大きく感じることが多いです。
主にシベリアから冬に日本全国へ渡ってきますが、沖縄では少ないようです。北海道では夏も見られ、繁殖もしています。
全体的に地味な色ですが、実際に観察すると襟足が灰色で、褐色の微妙なトーンの違いが渋いお洒落です。また、翼の一部に独特の光沢をもつとても綺麗な鳥です。


また、翼を広げると白い線が見えます。これは飛んでいるときによく見えるので、覚えておくと識別が早くなるので便利です。




カワラヒワをサインにシメを探そう


シメは公園や街中など身近な環境にもいる鳥ですが、そのような場所ではなかなかじっくり見られません。そこでお勧めしたいのは、雑木林と畑が隣接した里山の田畑や、



雑草の生えた河原です。


植物に詳しければ、エノキやオオブタクサなどが生えているところがポイントです。
「身の回りにはそんな場所はいろいろあってどう目星をつけていいのかわからないし、植物は見分けられない」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
そんなときは、シメがいる環境かどうかは、“カワラヒワの群れが近くにいるかどうか”で判断するといいでしょう。
シメとほぼ同じ環境に好むカワラヒワがたくさんいたら、



シメのいる可能性はかなり高いです。その周囲の高い木の枝先や雑草などが生えている地面や芝生を探してみましょう。






普段は少数、時々大群


シメはだいたい1〜2羽で行動しているのですが、時々大群を作ることがあります。
私がまだ小学生のときですが、自宅近くの空き地に200羽以上の大群が1週間ほど居着いたことがあります。
また、最近では2012年に埼玉県で100羽、2013年には東京都で50羽ほどの群れに会いました。
鳥に詳しい方にお聞きすると、数年に一度は地域によって大きな群れがやってきているようですので、みなさんのフィールドでもいずれ大きな群れに会えるかもしれません。




大きな嘴は何のため?


シメの分厚くて大きな嘴は、硬い植物の実を割って食べるのに進化したものです。




人間の指では到底つぶせないような硬い実も、平気で割って食べてしまいます。
以前、雪の日に弱ったシメを保護したことがありますが、ちょっと気を緩めたときに指を嘴でかまれたことがあります。弱っていたはずなのに、「痛い!」と言えないほど痛かったという経験があります。きっと嘴を動かす筋肉も体の大きさの割にはしっかりしていることでしょう。
スズメも植物の種を食べますが、嘴の厚みが異なるうえにシメほどには頭部が発達していないため、シメが食べる硬さの実を割ることができません。
シメの食事風景をよく観察すると、種には割り方があるようです。

まず種を探して歩き、


種を見つけると種を一つだけくわえ、その後嘴の中でコロコロと転がして種が割れやすいところを探って外側の厚い種の皮を剥いています。




あんな大きくて豪快な嘴なのに、一つ一つ丁寧にくわえて皮を剥く初めて行動を見たとき、何だかすごく律儀に思えて、それまで目つきの怖いにしか思えなかったシメが急に優しい鳥に見え、以来ずっと私はシメのファンです。
シメに限らず、種子食の鳥によく言えることですがよく水を飲みます。餌をたくさん食べているシメがいたら、近くの水場へ向かう姿を観察できるかもしれません




雄と雌の見分け方


シメは警戒心の強い鳥ですが、時々驚くほど近寄らせてくれることがあります。
そんなときは嘴と目の間の黒い線の濃さを見てみましょう。しっかりと濃いのが雄で、



淡いのが雌です。



慣れてくると全体的な色の鮮やかさなどでも見分けられるようになるでしょう。


嘴の色を変えて


雄と雌の見分けの写真を見ていただいたときに、雌はちょっとそれまでのシメと違う印象がありませんでしたでしょうか? 
写真を比較すると嘴の色が変わっています。
シメは冬と夏では大きく羽毛の色を変えることはありませんが、嘴の色を褐色から鉛色に変化させます。
この色の変化の始まりには個体差がありますが、3月ころからは徐々に色が変わっていきます。
また、桜の花が終わったころになると、植物の種子だけではなく、虫を食べる姿も見るようになります。



きっと北国に帰る渡りのために、動物性タンパク質を摂取する必要があるのだと思います。
こうなると、本州以南ではそろそろシメとお別れです。
元気に旅をして、また秋に戻ってきてほしいですね。




撮影地:
群馬県(館林市)、埼玉県(入間市、川越市、川島町、坂戸市)、東京都(小金井市、八王子市)


お勧め機種:
シメは警戒心が比較的強いので距離が遠い状態で観察することが多くなります。そのため、明るさが必要ですので双眼鏡はEDレンズ採用のものをお勧めします。見晴らしの効く場所での観察になりますので、望遠鏡は必ずしも大口径でなくても大丈夫です。

双眼鏡
エンデバー EDIIシリーズ
スピリットEDシリーズ

スポッティングスコープ
エンデバー HDシリーズ
エンデバーXFシリーズ
エンデバー スコープシリーズ


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